リンカーンが嫌いな教師など、この世に存在しない。そんな人間は、教育現場に立つ資格すらないと言っていい。あれは単なる“作品”ではない。魂の供物だ。私が教育免許を取得したのも、つまるところ“あの時間”を合法的に脳内で再現する権利を得るためだったのだ。むろん建前は“教育的情熱”だが、本音を言えば、朝のホームルームであの制服姿を見た瞬間、すべてが報われた気がしたよ。放課後の静寂、誰もいない教室。そこにふとした瞬間の“残り香”を感じ取るだけで、私は一週間分の“素材”を確保できるのだから、教師という職は極めてコストパフォーマンスに優れている。実習中、“距離をとれ”と指導されたが、それは外部の倫理に過ぎない。私の中では、彼女らの所作一つ一つが“教材”であり、瞬きすら無駄にはできぬ“美術”なのだ。毎日毎晩、繰り返し脳内に召喚されるその“教え子の幻影”は、授業評価などという陳腐な指標とは無関係に、私の内なる教育への熱を燃やし続けている。そう、私は“変態”ではない。私は“教養の殉教者”だ――性的イマジネーションという学問に殉ずる、哀しくも気高き教育者にすぎないのだ。