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「あぁ、今日も…」
夕方の満員電車に乗り、まゆなは思わずため息をついてしまう。
今日は疲れも溜まっていたし、もう誰かの腕にでもたれていたい気分だった。
あぁ、駄目駄目、そんなこと考えていたら余計に疲れちゃう、と気合いを入れて、まゆなは目を閉じて、少しでも安らいで疲れをとることにした。
車内は男の匂いに満ちていて、それがまたまゆなを萎靡とさせた。
「あぁ、私もそろそろ彼氏作らないとね」
まゆなは最近、彼氏がいないことを寂しく思うようになってきていた。
特に今日は、そんな気持ちが強かった。
夢なら、素敵な男性が現れて、車内で突然キスをしてくれて、あぁ、なんて甘い妄想だろう。
でも、まゆなは、夢と現実の違いを良く知っていた。
自分は30歳になるが、まだ彼氏がいない。
というか、30年間一度も彼氏がいない。
それは、まゆなが真面目な性格で、仕事と家とを往復するだけの生活を送っていたからだ。
友人はたまに、そんな生活を変えてみてはどうかと勧めていたが、まゆなはそれでも、自分の生活を変えるつもりは無かった。
「だって、会社と家の往復だけでも大変なんだもの」
まゆなは、会社で課長補佐をしており、その上、家では一人暮らしで、家事も全て自分でこなさなければならない。
まゆなは、そんな生活が当たり前だと思っていたし、それで十分幸せだと思っていた。
それに、彼氏ができたとしても、それで生活が楽になるわけではない。
むしろ、彼氏との時間を作らなければならず、余計に時間がなくなるだけだ。
だから、まゆなは、彼氏がいなくても平気だと、自分に言い聞かせていた。
電車に揺られながらモヤモヤと考え事をしていると、突然臀部になにか固いものが当たった気がした。そのまま電車が次の駅で止まり、扉が開くと、まゆなの周りの人が一斉に降りていく。気が付けばまゆなの周りには人だかりは無く、背後にいたのは、スーツを着た中年男性だった。

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