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幻の演奏会 ⑱決着のはじまり

大の大人が壁に耳を当てながら盗み聞き。

「…何してんの?」
その問いかけはこの状況で1番適切である…。

「あ…あ…ねぇ?」
スレンダーはセカンドに問いを問いで返す。

「……演奏会の話?聞いたよ。大変そうだね。
でも今更演目を変更するにしても何をするの?」

何も回答が浮かばない…。

そもそも何故31歳のセカンドが社畜はともかく、
42歳のスレンダーとタメ口で渡り合えるのか…

理由は2つ。

①BOSSのお墨付き
BOSSとセカンドは元々以前の職場が一緒だった。
転職したBOSSが社畜の職場のトップとなり、
優秀なセカンドを引き抜いて入職させたのだ。
スレンダーもこの件については一目置いている。
ちなみにこの話についてセカンドはあまり自分からは話さない。

②副リーダー就任後、バリカン事件大活躍
バリカンの補佐的なポジションについたセカンド。
感染事件以来、バリカンが思った以上に使えない事に
ショックを受けたスレンダーはセカンドを頼りにする場面が増えた。そして、距離感の近くなった2人は
自然とタメ口で会話するようになったのだ。

「何も意見がないのなら、もう諦めるしかないね。
良いじゃない。ある意味人気な病院になるよ。」

セカンドは他人事のように笑いながら語る。

これにも理由がある。
セカンドはバツイチかつ沢山の子供達と生活しているので、決まった時間に退勤しないといけない。
よって今回の市民祭りには不参加確定なのだ。
社畜達がどんな笑いものにされようと関係ないのだ。

「お客さんだってそんなに期待してないと思うから。大丈夫でしょ。てかそんな盗み聞きしてる暇があるのなら、現場を手伝ってよ社畜。」

強制的に医務室から連れ出される社畜。
その時休憩室からバリカン達の姿を確認できた。

「ぇ」
バリカンが泣いている……。
チェルシーとガーディアンが慰めている。
第三者はバリカンの頭皮を見ている気がする。
なにがあったのだろうか。

「……」
確実にセカンドも目撃していたが何も言わず黙々と
現場へと向かう…。

泣いてるのあんたの上司ですよ…。

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