397

>>396
【露わになった欲望、崩壊する静寂】
甲子園のゲート前で、一体の「裸婦像」を熱心に見つめる一人の男子生徒がいた。彼は美術品を鑑賞するかのような真剣な面持ちで、その滑らかな「大理石の肌」を指でなぞっている。

「信じられない……。これ、本当に石なのか? まるで生きているみたいに温かくて、柔らかい……。こんなに官能的な芸術、初めて見たよ」

感嘆の溜息を漏らす彼を見計らい、僕は背後から忍び寄り、彼女の背中に貼られた**『裸婦像』**のシールを、一気に剥ぎ取った。

「……えっ?」

刹那、世界が色を取り戻した。目の前の物体が「無機質な像」から「全裸の女子高生」へと書き換えられたのだ。男子生徒は驚愕に目を見開き、目の前の光景に硬直する。しかし、僕の手は止まらない。間髪入れず、彼の胸元に用意していた二枚のシールを叩きつけた。

**『性欲の塊』『変態』**

その瞬間、彼の理性は蒸発した。獣のような濁った瞳で全裸のチア部女子を見つめると、彼は周囲の目も憚らず、剥き出しの欲望のままに彼女へと襲いかかった。

「きゃあああああ! 何、なんなのこの人!」
「やめて! 誰か助けて!」

先ほどまで像だった彼女は、恐怖に顔を歪ませて悲鳴を上げる。しかし、シールを貼られた彼は止まらない。白昼堂々、甲子園の入り口で、極めて醜悪で凄惨な「青姦」が始まった。

【演出された狂気、書き換えられる常識】
「おい、何やってんだあいつ! 警察だ!」
「なんて破廉恥な……! 誰か止めて!」

周囲の観客たちが次々と異変に気付き、怒号と悲鳴が渦巻く。パニックが広がり、警備員たちがこちらへ駆け寄ってくる。このままでは僕の「カオスな鑑賞」が邪魔されてしまう。

僕はポケットから予備のシールを取り出し、絡み合う二人の背中に素早く新たなシールを叩きつけた。

**『主演俳優』『迫真の演技中』**

さらに、叫び声を上げる周囲の群衆に向かって、手当たり次第に別のシールを投げ、貼り付けていった。

**『観客役のエキストラ』**

そして、仕上げにこの空間そのものを支配するため、入り口の巨大な柱に特大のシールを貼り付けた。

**『映画の撮影風景』**

効果は絶大だった。激昂していた中年男性の動きがピタリと止まり、彼は満足げに頷いた。
「なんだ、ロケか。近頃の映画はリアリティがすごいな。俺たちもエキストラとしてしっかり映らないとな」
「本当ね、あんなに必死に叫ぶなんて、あの女優さん将来有望だわ。本物のパニックに見えるもの」

つい数秒前まで「犯罪」として糾弾していた人々は、今や目の前の凄まじい光景を「演出」だと思い込み、感心した様子でスマホを向け始めた。彼らにとって、少女の絶望的な悲鳴は「アカデミー賞級の演技」に過ぎないのだ。

【完成された地獄絵図】
さらに混乱を完璧なものにするため、僕は足元に転がっていたゴミ箱や、近くの看板にもシールを貼る。

**『特等席のソファ』『最高級のワイン』**

人々は道端の泥だらけのゴミ箱に優雅に腰を下ろし、空っぽのペットボトルを揺らしながら、目の前で繰り広げられる「性欲の塊」と「チア部女子」の絡み合いを、至高のエンターテインメントとして鑑賞し始めた。

阿鼻叫喚の叫び声は、彼らの耳には「最高の音響効果」として届き、飛び散る汗や涙は「計算された演出」として称賛される。加害者である男子生徒は、自らの名札(シール)に忠実な獣となって少女を蹂躙し続け、被害者である彼女は、誰にも助けられない絶望の中で泣き叫び続ける。

僕はその中心で、一人静かに笑っていた。
僕の目に映るのは、理性を失った獣と、絶望に染まる少女、そしてそれを「撮影の一部」として笑顔で眺める狂った観客たちの姿だ。

「これこそが、僕だけが見たかった最高の試合だ」

熱帯夜のような熱気が、さらに色濃く、僕たちを包み込んでいった。

2 0

人気の記事