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「これはチャンスなのかもしれない」と気付いたのは、しばらく後だった。
職場では普通に話もしていたので、彼女には珍しくケアレスミスがあったタイミングで、フォローしつつ飲みに誘った。
特に恋愛の話はせずに2軒回って、「なんかいっぱい話した」「こんなに話したの初めてかもね」とか言われた。タクシーで送って、途中で降ろして、自分の部屋に帰宅したあと、急いで彼女の部屋に行った。
シャワーの音がしていたので、しばらく待っていると、部屋の電気が消えた。けど、いつものように真っ暗にするのではなく、常夜灯が付いたままだった。
彼氏が来て、Hする時と同じ状態。
すると、小さな「あ・・・んん・・・フゥ、フゥ・・・」という声が聞こえてきた。その瞬間は彼氏とのHの声を初めて聞いた時より胸が高鳴った。
2分か3分で「あ、あ、あっ、ああ!」と大きな声が漏れたかと思うと、寝返るを打つような音が聞こえて、すぐに静かになった。
これって、お酒を飲んだからエロい気分になったんだろうか?とか、彼氏と別れてシたくなったんだろうか? 飛躍して「誘っていたらHできたんだろうか?」とまで考えた。

結局、後日「あの頃に彼氏と別れて落ち込んでいて」と聞かされた。それで、いろいろ聞き役になっていたことや、彼氏と別れたことを察しても、特に聞き出そうとしてこないのを、実際は後ろめたさや優柔不断さだったのに、優しさだと勘違いした彼女から距離を詰めてくるラッキーな展開になった。
その間もずっと、就寝時間のチェックは手帳につけていた変態だったのに。

それで、さらに少ししてから、告白はないまま、飲みに行った帰りに部屋に誘われ、お互い遠慮した控えめなHをした。
その後は回数を重ね「これが元カレを喘がせた口技か!」「わかりやすくイってくれるんだ!」と答え合わせをするように楽しんだ。
いろいろあって1年半で別れ、彼女は転職。
さすがに住所は交換しなかったので、覗きからは足を洗えた。
付き合っている間も、毎日ではなくなったけど、手帳をつけていた自分にはあきれる。

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